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中学校外国語新学習指導要領を読み解く観点①:英語で授業「やり取り」と「英語で授業」で深い学びを実現 上智大学外国語学部英語学科・言語科学大学院教授和泉 伸一 和泉 伸一(いずみ しんいち)先生 上智大学外国語学部英語学科・言語科学大学院教授。英語学科長。ジョージタウン大学博士課程修了。ハワイ大学及びオークランド大学客員研究員等を経て現職。専門は第二言語習得研究と英語教育。著書に『第 2 言語習得と母語習得から「言葉の学び」を考える』(2016,アルク),『フォーカス・オン・フォームと CLIL の英語授業』(2016,アルク),『「フォーカス・オン・フォーム」を取り入れた新しい英語教育』(2009,大修館書店)などがある。  この春に告示された新しい学習指導要領では,これまで以上にコミュニケーション志向が強まっていると同時に,英語教育に広がりと深まりを持たせることが鮮明になっています。以下,新学習指導要領で私が特に重要と感じる点について簡単に述べたいと思います。 生徒の「主体的・対話的で深い学び」の実現  新学習指導要領の大きな柱の 1 つに,「主体的・対話的で深い学び」の実現があります。その意味していることは何か,それぞれの言葉の対義語を考えてみると分かります。  「主体的」の反対は,「受動的・従属的」です。つまり,自らの意志で考えたり,学んだりするのではなく,ただ言われたがままに従うことです。「対話的」の反対は,「一方的・独白的」です。双方向の語り合いではなく,一方が延々と説明や話をしている状態です。そして,「深い学び」の反対は,「浅い学び」です。意味や目的を考えずに機械的作業に終始する学びや,暗記すればどうにかなるような学びは,「浅い学び」だと言えます。  このように考えてみると,「主体的・対話的で深い学び」とは,教師ばかりが語っていて,生徒はいつまでも受け身で,思考を伴わずにできてしまうような練習に明け暮れるものではないことが分かります。そうではなく,教師と生徒,また生徒同士の対話があり,生徒の学びたい意欲を喚起して余りある意味と目的のある授業展開が望まれているということなのです。 「実際のコミュニケーションにおいて活用する学習」  こういった授業は,おのずと多面的にコミュニケーションがふんだんに起こる授業となるでしょう。そこが「実際のコミュニケーションにおいて活用する学習」という部分で追記されているのです。  英語を話せるようになるためには,できるだけ多くの英語を聞くことが欠かせません。同様に,書けるようになるためには,書くこともさることながら,まず何よりもできるだけ多くの英語を読むことが必要です。インプット→アウトプットという流れは言語習得の大原則であり,学習環境や学習年齢に関係なく当てはまるものです。  そこで,特に必要となるのは,リスニングやリーディングを通した体験的学習であり,それを基にスピーキングやライティング活動へとつなげていくことです。体験的な学びが分析的な学びと大きく違うのは,それが単なる言葉の構造分析ではなく,意味内容の理解と評価,そして思考と大きく結びついている点です。つまり,本当の意味で,“聞き”,“読む”ということです。こうした体験的な学習は,小学校のみならず中学校でも重要であることは変わりません。また,そのような授業は,受容活動を情報・意見交換などの多彩な発信活動へと,自然と結び付けやすくなるものです。 4 技能 5 領域と「やり取り」の重要性  新学習指導要領では,4 技能にわたって英語を実際のコミュニケーションとして活用することを通して,言葉の働きに気付き,意味と目的感を持って形式の学習を推進していくことを目指しています。体験的学習と分析的学習を切り離すのではなく,その間の距離を近づけることで,学びの相乗効果をねらうのです。  そうした授業を行ううえで,「やり取り」の重要性は強調に値するでしょう。互いのやり取りを通してコミュニケーションしようと試みる中で,学びのポイントを実感できます。そのタイミングで分析的に言葉の使い方を見ると,目的感のある有意義な学びが可能となってきます。やり取りの中では,インプット→アウトプット→インプット→…という自然な流れが成立するのも大事な点です。  新学習指導要領では,「やり取り」は「話すこと」の技能に含まれていますが,やり取りには「聞くこと」も入ってきます。「読むこと」でも,教師と生徒,また生徒同士のやり取りを通して内容理解を深め,意見交換を促すことができ,「書くこと」でも,互いに書いたものに対して質問や意見を交換することができます。つまり,やり取りは会話練習にとどまらず,言語学習の基点とさえ言えることなのです。それは「プラス 1」ではなく,4 技能全てを有機的に結び付ける“要”と考えるべきでしょう。 やり取りを中心とした 4 技能 5 領域  ちなみに,言葉の発達過程では,手助けを得ながらの相互のやり取りを通して,少しずつ自立して話せるようになっていくのが自然な姿です。教育の際には,この言語習得からの知見を忘れてはならないでしょう。 「授業は英語で」  新学習指導要領の別の大きな目玉として,「授業は英語で行うことを基本とする」ことがあります。これは,「生徒が英語に触れる機会を充実」し,「授業を実際のコミュニケーションの場面とする」ことをねらうものです。  確かに,日本という環境では生徒が日常で自然に英語に触れるような機会は限られています。だからこそ,授業で生徒ができるだけ多くの英語に触れられるよう,十分配慮が必要です。外国人補助教員や教科書付属の CDなどを活用するだけでなく,日本人教師自身が肉声で,“ライブ”の英語で生徒に話しかけていきたいものです。  日頃から教師が頻繁に英語を使っていく積極性と楽しさを示さなければ,いくら言語活動で「英語で話せ」と号令をかけても説得力は全くありません。まずは何より教師自身が英語を日常のコミュニケーションの道具として使っていくことが肝要です。  また,上にも書きましたが,十分なインプットがあってこそ,豊かなアウトプットが望めます。だからこそ,まず教師が率先して英語を使って,やり取りを通して豊かなインプットを与えつつ,徐々に生徒の英語発話を引き出していくことが大事なのです。 ティーチャー・トークのあり方  授業を英語で行う際は,従来型の解説ではなく,意味のある例文を文脈の中で多く提示してあげることが重要になってきます。教科書の本文理解の際も,安易に和訳に頼るのではなく,できるだけ英語でのやり取りを通して教えてあげることを目指すべきです。そこで必要になるのが,ティーチャー・トークです。  説明や発問,課題の提示などを生徒の分かる英語で伝えるためには,発話の速度や明瞭さを調整するとともに,使う語句や文を平易なもので言い直したり,繰り返しを多くしたり,具体例を与えたりすることが必要です。視覚的補助を豊富に使ったり,図を板書して説明したりする工夫も,日本語で行う授業以上に気を使わなければなりません。双方向的な授業運びも考える必要があります。  日本語の使用の際は,いつ,どの場面で日本語にしたほうが効果的なのかを見極めることが重要です。そういった質的な考慮を踏まえたうえで,あえて英語と日本語の割合を量的に示すとすれば,英語8~9対日本語1~2 割あたりが理想的でしょう。 ここで簡単にですが,教科書に以下のような文章がある場合,ティーチャー・トークを使って双方向的な授業をするとどうなるか,一例をあげておきたいと思います。 〈元の文〉Japanese people are very fond of cherry blossoms not only because they are beautiful, but also because they only bloom for a very short period of time. It is customary for many people to enjoy eating and drinking with family, friends or coworkers under the cherry blossoms. 〈ティーチャー・トーク〉 Do you like flowers? ... Which flowers do you like the best? ... I love flowers because flowers often signal the arrival of spring. You know my favorite flower? It blooms(ジェスチャーで示す), blooms, ... right, 咲く. It blooms on trees, and when it blooms, the whole place becomes really pinky. It’s so beautiful. What is it? ... Yes, 桜 , cherry blossoms. Japanese people like cherry blossoms very much. Why? ... Because first, they are beautiful. Second, cherry trees bloom for a very short time. How long do cherry blossoms last or live? ... Only about a week or so. So, we can enjoy it only for a short time. Many people like to go under the cherry blossoms and enjoy eating with family and friends. Have you done that? ... It is a custom in Japan. It is a tradition. In Japan, it is customary or traditional to have a party under cherry trees in spring.  本文よりもだいぶ長くなっていますが,それがポイントです。日本人教師は英語のネイティブではないので,英語を使って授業を行うことをためらう傾向があります。しかし,重要なのはペラペラとかっこつけて話す日本人教師の姿ではなく,英語を真のコミュニケーション手段として使おうと挑戦している教師の姿です。生徒が自分の英語に対して自信を持って使えるようになるためには,授業で触れる日本人教師の英語使用に対する姿勢が大きな影響力を持ちます。今,全国を見回すと,そういった挑戦をする先生方が続々と現れてきているのは,本当に頼もしいことです。 ※この原稿は東書教育シリーズ『中学校外国語新学習指導要領を読み解く―6つの観点で考えるこれからの学び―』(東京書籍,2017)に掲載されたものです。 関連リンク 中学校外国語新学習指導要領を読み解く 【総論】新しい学習指導要領のねらい 【観点①:英語で授業】「やり取り」と「英語で授業」で深い学びを実現 【観点②:CAN-DO】CAN-DOリストによる目標と評価 —授業改善のために 【観点③:小中連携】目標の一貫性,指導内容の系統性,指導法の継続 【観点④:文,文構造及び文法事項】コミュニケーションにおける活用のための文法指導 【観点⑤:語彙】新学習指導要領における語彙指導の考え方 【観点⑥:デジタル】新教育課程下におけるデジタル教科書の位置付けと活用 【東書Eネット】中学校英語・中学校外国語 新学習指導要領を読み解く- 6 つの観点で考えるこれからの学び-

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